2019年度・10月分読書会 活動報告(2)

みなさん、こんにちは、本ノ猪です。

先月まで「アツい、アツい」と唸っていた私ですが、いまではすっかり秋らしい(というかむしろ冬らしい)温度と湿度に包まれて、学業や労働に専念しています。

秋と言えば「読書の秋」ですが、私にとっては「古本の秋」でもあります。

それは、四天王寺大阪天満宮百万遍知恩寺といった由緒ある建築物をバックにして古本市が開催されるためです。

すでに、四天王寺大阪天満宮で開催される古本市は終わってしまったのですが、百万遍知恩寺のそれは、開催期間が「10月31日~11月4日」となっており、開催間近です。ぜひ足を運んで頂きたいと思います。

私自身は全日参加する予定ですので、お声掛け頂けると嬉しいです。

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今回は「2019年度・10月分読書会 活動報告(2)」ということで、本ノ猪(@honnoinosisi555)のレジュメと感想文を掲載したいと思います。

 

レジュメ↓

 

感想文↓

今月の読書会は、いつもとは異なり、19時からの開始となりました。終了は23時過ぎでしたので、「充実した読書会になったなー」と勝手に満足感を覚えています。

 今回の課題図書は、村上春樹のデビュー作である『風の歌を聴け』。私は今年になってから、村上春樹文学に熱中しはじめ、三カ月分の時間を費やして、『風の歌を聴け』から『騎士団長殺し』まで(一応)読破しました。この体験は私に、様々な学びや感動を与えたのですが、その「熱中」を生み出した源には、デビュー作である『風の歌を聴け』が持っていた魅力があったと思います。

 読書会には、実際に小説を執筆している方や、村上春樹文学に長い期間触れてきた方など、ただの受け身としての読者の域を出た方々が参加してくれました。「ただの受け身としての読者」というのは分りにくい表現ですが、いいかえると、ただ作品をありのままに「楽しむ」ために読書をしているのではなくて、自身の経験や考えと作品の内容を重ねることによって、そこから新しい文学観や発想を生みだそうとする読者だと言えます。私が細々と読書会を開催しているのは、読書を通して考えた事や思った事が、他人の目に触れる機会をつくるためでした。読了後に考えた事や思った事を「言語化」する作業は、なかなか難易度が高いものです。自分もレジュメ作成に取り掛かるたびに、「ああ……これでは言いたい事が伝えられない……」と頭を抱えることが多々あります。ただこの過程を通すことで、本の内容がきちんと「血肉化」されているという風に感じます。ぜひ読書会に参加して、このような感覚を味わってほしいです。

 

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村上春樹風の歌を聴け』(講談社、2004)⇒https://amzn.to/33eijql

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以上で「2019年度・10月分読書会 活動報告(2)」を終ります。

ご覧いただきありがとうございました。

2019年度・10月分読書会 活動報告(1)

みなさん、こんにちは、本ノ猪です。

10月20日(日)の19時00分から23時00分までの4時間、

10月分の読書会を開催しました。

課題図書は、


村上春樹風の歌を聴け』(講談社、2004)⇒https://amzn.to/33eijql

 

「第二十二回群像新人文学賞を受賞した、村上春樹のデビュー作。

作品に込められた熱意に感応するように、読書会は大盛り上がりでした。

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今回は「2019年度・10月分読書会 活動報告(1)」ということで、「秋山○さん(@iJJVl6Gf8VdAh1T)」のレジュメと感想文を掲載したいと思います。

 

レジュメ↓

 

感想↓

レジュメで浅はかなことを言ってしまった秋山です。私はレジュメで春樹の音楽やセックス、細かな名詞が世界観を形作ってはいるが、問題の本質には結びついていないと書いた。
 しかし『風の歌を聴け』が一つの書かれた作品であるならば、そこに書かれたものは作者が選択したものである。そして私は趣味で小説を書く者として、一つの作品を完成させるさい無駄なものは書かない。問題を設定し、それを掘り下げるために、遠回しでも必ず余計なものは書かない、あれば削ぎ落す。だとすれば、春樹の作品世界における音楽やセックスも問題に関係あると考え、意味を問いなおしていく。そのことをフカミンさん(@arisaemaurashi)から教わった。そしてできるならば、それらを踏まえたうえで人と人との、行間とは違った、書かれていない関係を自分なりに考え、作品に組み込まれた構造を俯瞰することを蛍さん(@kei__sui)から教わった。読書会に参加してレジュメと考えが180度変わってしまった。また勉強になった。

 

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村上春樹風の歌を聴け』(講談社、2004)⇒https://amzn.to/33eijql

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今回秋山○さんは「趣味で小説を書く者」の視点からレジュメを作ってくださいました。

秋山○さんがレジュメ内で投げかけていた疑問は、『風の歌を聴け』の中に散りばめられている音楽やセックス、素敵な台詞回しは、ただ場面を彩るための小道具として機能しているのか、それとも作品の中心にある主張やメッセージと直接繫がっているのか、ということでした。

一般的な村上春樹に対するイメージを考えると、おそらく前者のような理解をしている人が多いのではないかと思います。一方、読書会参加者の半数は、後者のような理解をしていました。『風の歌を聴け』には、どの部分に注目するかによって、様々な読み方が存在することが改めて分かりました。

最後に、秋山○さんのレジュメ内にある印象深い文章を引用しておきます。

『風の歌を聞け』は処女作らしい、分かりにくいが勢があって、言いたいことがいっぱいあって膨らんでしまい、全体としてイガイガして、それでもどこか光ってる、そんな感じがする。いまや世界の村上春樹も、一人 の駆け出しの作家だったと思うと親近感を抱いた。

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以上で「2019年度・10月分読書会 活動報告(1)」を終ります。

ご覧いただきありがとうございました。

 

 

 

2019年度・10月分読書会について

みなさん、こんにちは、本ノ猪です。

今回は、「2019年度・10月分読書会について」ということで、

10月分読書会の概要について、簡単に示したいと思います。

 

【10月分読書会概要】

○課題図書:村上春樹風の歌を聴け』(講談社文庫、2004)⇒https://amzn.to/33eijql

○開催日:10月20日(日)*変更あり

○開催場所:京都の某古書店

○参加方法:できるだけ事前に課題図書を読んでくる(「絶対」ではない)。

      現地参加 or Skype参加。

*読書会参加希望の方は、Twitter:本ノ猪(@honnoinosisi555)に連絡をお願いします。

 

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村上春樹風の歌を聴け』(講談社文庫、2004)⇒https://amzn.to/33eijql

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村上春樹は今年で作家デビュー40周年になります。「ハルキスト」と呼ばれる熱烈なファンがいる一方、「村上春樹ィ……」と名前を耳にするだけで怪訝な表情を見せる人もいます。
今回は、現時点で村上春樹が好きな人も嫌いな人も原点に立ち返って、村上春樹の出発点である処女作『風の歌を聴け』を一緒に読みたいと思います。「まだ読んだことないんだけど……」という方は、これを機会に読んでみてください。
ご参加、お待ちしています!

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以上で「2019年度・10月分読書会について」を終ります。

ご覧いただきありがとうございました。

 

 

2019年度・9月分読書会 活動報告(3)

みなさん、こんにちは、本ノ猪です。

今回は「2019年度・9月分読書会 活動報告(3)」ということで、

拙者・本ノ猪(@honnoinosisi555)のレジュメと感想、

及び、Kamikawaさん(@Theopotamos)の感想を掲載したいと思います。

 

本ノ猪のレジュメ↓

 

本ノ猪の感想↓

今回のレジュメでは、『人間問題』の主要登場人物の一人である「ユ・シンチョル」の「余裕」と「転向」を中心に取り上げて、議論を進めた。

京城帝大生のユ・シンチョルは、何が「引き金」となり「転向」を選択するに至ったのか。『人間問題』の中の「最近日本でも××党の巨頭たちが転向したことも知っているはずだ。」(P355)という一文に注目して、日本の社会主義共産主義運動の歴史(発展・衰退)を振り返ることで、「引き金」の正体を明らかにすることを目指したが……成功したかどうかは不明である。

 お時間があれば、ぜひ本ノ猪のレジュメをご覧ください。
 コメント、お待ちしています!

 

 

Kamikawaさんの感想↓

 「『82年生まれ、キム・ジヨン』の問題意識につながるような女性差別の問題なんかも取り上げたかったですね。資本家 vs 労働者という大きな構図があるので分かりにくいですけど。。。

(本ノ猪コメント:読書会中にKamikawaさんは、「日本のプロレタリア文学運動と朝鮮のそれでは、時期的にズレがある」との指摘をなさっていましたが、私もそこには気になる所がありました。また、『人間問題』の読み解き方に関しては、「資本家vs労働者」という視点の他に、「女性差別」という観点も採用すべきであるとする、上記の「感想」の内容には、強く頷けました。)

 

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 姜敬愛著、大村益夫訳『人間問題』(平凡社、2006)⇒https://amzn.to/2mgy0xe

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以上で「2019年度・9月分読書会 活動報告(3)」を終ります。

ご覧頂きありがとうございました。

 

 

2019年度・9月分読書会 活動報告(2)

みなさん、こんにちは、本ノ猪です。

 

10月になりました。

読書の秋、という言葉をよく耳にする時節です。

ただ、

私が住んでいる京都だけではないと思いますが、

とてもとても暑いです。

「まだ8月下旬だっけ?」

と疑いたくなるくらい、常に汗まみれです。

一週間に、最低3日は屋外労働をする身としては、さっさと涼しくなってほしいです。

おそらく「涼しくなったなー」と思う間もなく、「寒い!凍る!」と震えていると思いますが……。

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今回は「2019年度・9月分読書会 活動報告(2)」ということで、
読書会の常連・秋山○さん(@iJJVl6Gf8VdAh1T)のレジュメと感想、
及び幽々さん(@yuu_yuu_ziteki_)の感想を掲載したいと思います。

 

秋山○さんのレジュメ↓

 

秋山○さんの感想↓

読書会に参加する前、『人間問題』の内容と「人間問題」というタイトルが不釣り合いな気がしていた。それは現代の私にとっての人間問題はもっと別のものになってしまったからで、『人間問題』が書かれた1934年の韓国では労働問題が重要な問題となっており、それゆえの「人間問題」というタイトルになっていた。
 今回の課題図書、姜敬愛『人間問題』はハングルで書かれたもので、推薦者である韓国人の炭山さんが原文で読んで参加してくださった。そのため自分の抱く疑問であった日本語で分からない言葉は随時質問させてもらい、かくキャラクターの名前など原文での意味などを教えていただき、文学において原典にあたるということの重要性を実感する読書会だった。

 

幽々さんの感想↓

幽々です。今回の読書会はほとんど課題図書が読めずにでの参加となりましたが、深い問題について語り合えました。人間の深いところに関わる問題についての本がまた課題図書になると嬉しいです。

(本ノ猪コメント:本読書会では、課題図書を読了できていない方の参加も大歓迎です。読書会中でのレジュメを使った発表を通して、「よし手に取ってみよう!」と思ってもらえればと考えています。もちろん、読んできてから参加した方が、議論に加わりやすいという一面もあります。自分にあった仕方で、参加をご検討ください!)

 

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 姜敬愛著、大村益夫訳『人間問題』(平凡社、2006)⇒https://amzn.to/2mgy0xe

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以上で「2019年度・9月分読書会 活動報告(2)」を終ります。

ご覧いただきありがとうございました。

2019年度・9月分読書会 活動報告(1)

みなさん、こんにちは、本ノ猪です。

9月29日(日)の14時00分から18時00分までの4時間、

9月分の読書会を開催しました。

課題図書は、


姜敬愛著、大村益夫訳『人間問題』(平凡社、2006)⇒https://amzn.to/2mgy0xe

 

本書は、大日本帝国の統治下にあった朝鮮において、過酷な労働環境・苦しい生活を強いられていた、地方の農民、都市労働者の状況を、「文学作品」の形にして問題提起する一冊となっていました。北朝鮮と韓国で評価に違いはあるものの、「近代朝鮮文学」の代表作とされる文学作品に触れることができたのは、大変貴重な機会になったと思います。一人でも多くの人に、手に取って頂きたい一冊です。

 

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姜敬愛著、大村益夫訳『人間問題』(平凡社、2006)⇒https://amzn.to/2mgy0xe

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今回は「2019年度・9月分読書会 活動報告(1)」ということで、今回の課題図書・『人間問題』を推薦してくださった、炭山さん(@kingtyrano)のレジュメと感想文を掲載したいと思います。

 

レジュメ↓

 

感想文↓

 「韓国人として韓国の近代文学を日本の皆さんに紹介するという、甚だ責任を感じる読書会でしたが、却って自分のほうがいろいろ勉強させていただきました。 最近韓国の若手作家の作品が日本でも人気だと聴いていますが、「人間問題」のような古典にもこれから触れていただける方が増えることを願ってやみません。 猪さんも読書会で話していますが、植民地朝鮮という一つの世界を垣間見るにはこの本がうってつけの鍵になると思います。まだ読んでいない方はぜひ目を通してみてください。

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今回の炭山さんのレジュメと、それを用いた発表からは、多くの学びを得ることができました。

炭山さんは読書会参加者の中で唯一、原文で『人間問題』を読んでいることもあり、日本語翻訳本からは掴むことが出来ない要素を幾つも指摘してくださいました。
例えば、

 

●登場人物の名前の付け方について⇒主人公の名前である「チョッチェ」という言葉は、一般的に「長男」という意味で使われる。登場人物の一人である「カンナン」は、「赤ちゃん」という意味の言葉として使われることが多い。富裕層及びエリート層の名前には姓名があり、漢字表記が想定される、など。(炭山さんの読書会中のコメントより)

 

以上の指摘は、ただ日本語訳の『人間問題』を読むだけでは、決して気付くことができない部分です。ここからは、姜敬愛が登場人物の名前に込めた「意図」のようなものを掴むことができます。大変興味深いです。

 

その他にもレジュメ内では、『人間問題』の「あらすじ」や執筆時の「時代背景」なども解説されています。ぜひご覧ください。

 

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以上で「2019年度・9月分読書会 活動報告(1)」を終ります。

ご覧いただきありがとうございました。

 

2019年度・9月分読書会について

みなさん、こんにちは、本ノ猪です。

今回は、「2019年度・9月分読書会について」ということで、

9月分読書会の概要について、簡単に示したいと思います。

 

【9月分読書会概要】

○課題図書:姜敬愛(カンギョンエ)著、大村益夫訳『人間問題』(朝鮮近代文学選集2、平凡社、2006)amzn.to/2Pn1QOx

(課題図書は書店やアマゾンなどで購入してもいいですが、値段が多少高めとなっていますので、お近くの図書館で借りることをお勧めします。)

 

○開催日:9月29日(日)*変更あり

○開催場所:京都某所

○参加方法:できるだけ事前に課題図書を読んでくる(「絶対」ではない)。

      現地参加 or Skype参加。

*読書会参加希望の方は、Twitter:本ノ猪(@honnoinosisi555)に連絡をお願いします。ご参加、お待ちしています!!!

 

*姜敬愛(カンギョンエ)及び『人間問題』の紹介(書籍背表紙より)

自ら貧しい農民の娘として育った姜敬愛(一九〇六~一九四四年)は、李光洙(イグァンス)らの近代啓蒙主義に飽きたらず、植民地支配下の農村と都市の貧しい労働者の姿を過酷なまでにリアルに描こうとした。『人間問題』(一九三四年)は、姜敬愛二八歳の時の傑作であり、朝鮮プロレタリア文学運動が生み出した最高の成果の一つであるとされる。

 

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姜敬愛(カンギョンエ)著、大村益夫訳『人間問題』(朝鮮近代文学選集2、平凡社、2006)⇒amzn.to/2Pn1QOx

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以上で「2019年度・9月分読書会について」を終ります。

ご覧頂きありがとうございました。