2019年度・3月分読書会 活動報告(1)

みなさん、こんにちは、本ノ猪です。

 

あまり意識はしていなかったのですが、
この読書会を開催し始めてから、
ようやく一年の月日が流れました。


いや、「はやくも」と言っていいかもしれません。


Twitterで参加者を募集し、毎月一回行っている読書会を継続していることは、冷静に考えてみると奇跡的なことです。
この「奇跡」を起こせているのは、毎月大切な時間の一部を使って、読書会に参加してくださっている方がいるからだと思います。

感謝してもしきれません、本当にありがとうございます。

 

4月以降も、変わることなく開催できればなと考えています。

ご協力のほど、よろしくお願いします!

 

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今回は「2019年度・3月分読書会 活動報告(1)」ということで、
今月の課題図書

中井英夫『虚無への供物』
(上巻:https://amzn.to/2Fv2RwJ、下巻:https://amzn.to/2U7qsfe

の推薦者である、秋山白さん(@akiyamahaku)のレジュメと感想文を掲載します。

 

レジュメ↓

 

感想文↓

今回レジュメをつくりました秋山白です。
 『虚無への供物』は『ドグラ・マグラ』同様にレジュメを作らないと読み込めたとは言えない小説でした。この話は複数の関係のない事件から犯人を結び付けるという、読者の好奇心が作りだした話であり、中井英夫が敏感に感じ取った1954~55年という時代が背景に存在する。

 猪氏のレジュメはその時代を知る上で参考になる。
 『虚無への供物』冒頭でもふれられているように二重橋圧死事件、第五福竜丸、黄変米など歴史から見ても目立つような事件が続いた。他にも硫酸事件や仁保事件などがあり、検挙率のグラフでいうと昭和29年が浮いているのがわかる。それらを反映させてうまれてきた『虚無への供物』はミステリーベスト100の結果を見ると横溝正史『獄門島』と並び不動の地位を築いている。またミステリー小説をあまり読まない私は『ドグラ・マグラ』がミステリーの系譜に連なる作品だと初めて知った。それらを含めて『虚無への供物』という一作品の評価と内容の意味を知ることができ幸せな思いだった。

(上記にある「猪氏のレジュメ」は、次回の「2019年度・3月分読書会 活動報告(2)」にて掲載します)

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  今回、秋山白さんには、中井英夫『虚無への供物』の大まかな内容を解説するレジュメを作って頂いた。
 「日本三大奇書の一冊」と呼ばれるだけあって、物語の構造は大変「複雑」。そんな小説の「大まかな内容」を掴むことはとても難しく、ましてや他の人が読んで分かる「レジュメ」を作るのは、根気のいる作業である。そのような現状がある中で、秋山白さんはきちんと小説内で起こった事件の概要や登場人物をおさえたレジュメを作ってくださったのには、心から感謝したいと思う。

 秋山白さんのレジュメにも指摘がある通り、この小説の中には「ある犯罪が起こったとき、私たちはそれと無関係ではいられない」というメッセージが込められている。
 例えば、母親が自分の子供を虐待して殺してしまう事件や、ある男がコンビニを襲って店員を殺害してしまう事件などが起ったとき、そのような事件が生じてしまうような社会の中で生きている私たちにはどのような「責任」があるだろうか。私たちはなんらかの形で「社会」が作られる上で関与しているのは間違いない以上、「社会」で起こる「事件」に対しても、無責任・無関心でいるわけにはいかない。

 「事件」を「傍観者」として眺める人間に警告する―『虚無への供物』には、以上のような意図があったと思われる。

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(写真:「日本三大奇書」集う)

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以上で、「2019年度・3月分読書会 活動報告(1)」を終ります。

お読み頂きありがとうございました。