5月分読書会 活動報告(1)
こんにちは、本ノ猪です。
暑い日々が続いていますが、みなさん、どうお過ごしでしょうか?
京都では最近雨が多くなり、自転車生活の私には少し憂鬱な日々が続いております。
5月27日(日)に開催した読書会は、
無事盛況をもって終えることができました。
読書会開催にあたりまして、
課題図書の推薦、課題図書の決定(投票)、読書会への参加など、
様々な形でご協力頂いた皆様に、心から感謝いたします。
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今回は活動報告(1)ということで、
課題図書推薦者・つるばみさん(@thurubami_ramu)のレジュメと
感想文を以下に掲載します。
感想文↓
「推薦者のつるばみです。一人で読んだ時、どう解釈すれば良いのだろうかというただのモヤモヤが残りましたが、読書会メンバーと話しながら深めて行く中で、時代背景や、解釈の仕方など様々なことを知れて良かったです。
また、皆と一体感をもって、こんな奇書に対して楽しいと思えたあの空間にいれて嬉しかったです!」
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つるばみさんは、課題図書の推薦者として、5月分読書会をまとめてくれました。
本当に感謝しています。
つるばみさんの『ドグラ・マグラ』を通しての関心・疑問点は、
上記のレジュメに示されている通りですが、
それはほんの一部で、
参加者のほとんどが考えも及ばなかった点に注目して、
とても興味深い解釈を展開していました。
その中でも特に興味深かった点に
「主人公は結局何者なのか?」
という問いがありましたが、
これへの幾つかの解釈については、
最後に回を改めて(別日のブログ内で)、発表したいと思います。
今回は、つるばみさんの解釈で、大変面白かった
「ブ―ン」論(勝手に命名)
を見ていきます。
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私は寝台の上に長々と仰臥したまま、死人のように息を詰めていた。眼ばかりを大きく見開いて…………………………………。
……ブ…………ンンンンン……
という時計の音が、廊下の行き当りから聞えて来た。
隣室となりの泣声がピッタリと止んだ。それにつれて又一つ……
……ブ――――ン……
という音が聞えて来た。前よりもこころもち長いような……私は一層大きく眼を見開いた。
……ブ――――ン……
……という音につれて私の眼の前に、正木博士の骸骨みたような顔が、生汗なまあせをポタポタと滴たらしながら鼻眼鏡をかけて出て来た……と思うと、目礼をするように眼を伏せて、力なくニッと笑いつつ消え失せた。
……ブ――――ン……
夥しい髪毛かみのけを振り乱しつつ、下唇を血だらけにした千世子の苦悶の表情が、ツイ鼻の先に現われたが、細紐で首を締め上げられたまま、血走った眼を一パイに見開いて、私の顔をよくよく見定めると、一所懸命で何か云おうとして唇をわななかす間もなく、悲し気に眼を閉じて涙をハラハラと流した。下唇をギリギリと噛んだまま見る見るうちに青褪あおざめて行くうちに、白い眼をすこしばかり見開いたと思うと、ガックリとあおむいた。
……ブ――――ン……
少女浅田シノのグザグザになった後頭部が、黒い液体をドクドクと吐き出しながらうつむいて……。
……ブ――――ン……
八代子の血まみれになった顔が、眼を引き釣らして……。
……ブ――ンブ――ンブ――ンブ――ンブ――ン……
頬を破られたイガ栗頭が……眉間を砕かれたお垂髪さげの娘が……前額部の皮を引き剥がれた鬚ひげだらけの顔が……。
私は両手で顔を蔽おおうた。そのまま寝台から飛び降りた。……一直線に駆け出した。
すると私の前額部が、何かしら固いものに衝突ぶっつかって眼の前がパッと明るくなった。……と思うと又忽たちまち真暗になった。
その瞬間に私とソックリの顔が、頭髪かみのけと鬚を蓬々ぼうぼうとさして凹くぼんだ瞳めをギラギラと輝やかしながら眼の前の暗やみの中に浮き出した。そうして私と顔を合わせると、忽たちまち朱あかい大きな口を開いて、カラカラと笑った……が……
「……アッ……呉青秀……」
と私が叫ぶ間もなく、掻き消すように見えなくなってしまった。
……ブウウウ…………ンン…………ンンン…………。
(夢野久作『ドグラ・マグラ(下)』平成24年、71版、P375-377)
つるばみさんは、上記の引用箇所の「ブーン」に注目して、
「「ブーン」は時計の鐘の音で、合わせて12回鳴っている。
だからこれは「12時(24時)」を指している」
と解釈した。
そして、次に『ドグラ・マグラ(上)』の地の文の冒頭に注目して、
…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
私がウスウスと眼を覚ました時、こうした蜜蜂みつばちの唸うなるような音は、まだ、その弾力の深い余韻を、私の耳の穴の中にハッキリと引き残していた。
(夢野久作『ドグラ・マグラ(上)』平成24年、80版、P5)
「この「ブーン」は、下巻の最後の「ブーン」の続きで、
この引用文の直後に「それをジッと聞いているうちに……今は真夜中だな……と直覚した。」という文章があることが、それを証明している。
ということは時系列を考えると、
下巻→上巻と考えられる(または、下→上→下…とループしている)。」
と自論を展開した。
この解釈は、他の参加者には誰一人として考えている人はおらず、
大変興味深い指摘だったように思います。
何といっても、この上下巻の大著を前にして、
「ブーン」の数を数えているつるばみさんの読解には、
度肝を抜かれました。
みなさんはどうでしたでしょうか?
数えるのが当然なんでしょうか?
ご意見をお聞かせください笑
それでは以上で、活動報告(1)を終わります。
お読みいただき、ありがとうございました。
失礼いたします。